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労働情報連載エッセイ⑤:労働者に国境はない

 労働情報連載エッセイ第5弾の紹介です。

労働者に国境はない

 私は外国人労働者を多数組織する労働組合で専従をしている。ブラジル人組合員とはポルトガル語で、ペルー人、ボリビア人そしてコロンビア人組合員とはスペイン語で、フィリピン人組合員とは英語で意思疎通している。多国籍労働組合では様々な言語を駆使することが求められるが、外国語を喋るだけでは外国人労働者と共に労働運動はできない、と日々の活動を通じて実感している。言語のみならず、外国人労働者の文化、風習、習慣などを理解しようと努め、またそれらを尊重することが重要である。

 一例を挙げよう。ボリビア人の女性が「派遣で働いているが、有給休暇がとれない」と組合事務所へ労働相談に訪れた。私は彼女に「有給休暇は労働者の権利」と説明した上で、「簡単には行使できないが、使用者には時季変更権がある」と伝えたところ、彼女は「有給休暇の日にちを変えられては困る」という。理由を聞くと、「娘の15歳の誕生日に休みが欲しい」とのこと。私が「キンセ・アニョス なら変えられないね」というと、彼女は、私がキンセ・アニョスを知っていることに驚きつつも、嬉しそうにうなずいた。

 ボリビア人女性の件では、組合より派遣会社へ「組合員は有給休暇を取得する」と書面で通知した。その後、私は会社の担当者へ電話をかけ、キンセ・アニョスについて説明し、「組合員はキンセ・アニョスのために有給休暇を取得するから、時季を変更してはならない」と伝えた。労働組合から申し入れがあったので、派遣会社は有給休暇取得を拒否できず、ボリビア人女性は希望する日に有給休暇を取得した。

 キンセ・アニョスについて知識がなくとも、スペイン語が話せれば南米の労働者へ有給休暇について説明は可能だ。しかし、通り一遍の法律知識を伝達するだけで労働運動といえるのだろうか。娘の大事な日を祝いたいという母の思い、そのために有給休暇を取ろうと決意を固めた労働者の覚悟(多くの南米の労働者は、有給休暇の取得を申し出ただけで解雇されるという、無権利状態で働いている)、それらを理解しようとし、そして労働者の立場に寄り添ってこそ、労働運動といえるのではないか。

 国籍が違えども、私たちは同じ労働者であり、外国人、日本人の別なく、全ての労働者は個人としてかけがえのない存在である。外国人嫌悪を煽る奴らの策動には与せず、海を越えてやって来た仲間と共に労働運動をしよう。私たち労働者に国境はないのだから。

キンセ・アニョス(Quince Años):女の子の15歳の誕生日を祝う行事。中南米では、15歳で女性は成人するとし、この誕生日を盛大に祝う。結婚・離婚を2~3回繰り返すのが当たり前のキューバでは、「女性にとって、キンセ・アニョスは結婚式より大切。結婚式は2回・3回でもできるが、キンセ・アニョスは一生に1回だけ」とのこと。

友延秀雄(とものぶ ひでお)
ゼネラルユニオン書記次長。大阪全労協青年部長。学生時代は大学を休学し、キューバでスペイン語を学び、南北アメリカ大陸をオートバイで縦断。中南米諸国の絶望的な貧富の格差と、医療と教育が無料のキューバを目の当たりにし、社会変革の重要性を実感。

(労働情報858号 2013年3月1日発行)

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